【ストーリー】
太平洋上空を飛行していたLA発東京臨海空港行きさくら航空444便。
最新鋭ボーイング747-9(ダッシュナイン)の機内で男の刺殺体で発見された。
彼は結婚詐欺の罪で警視庁から指名手配中だった。
騒然となる機内。
その直後、アメリカ遠征から帰国中のプロ野球『東京ギャラクシーズ』2軍選手団になりすました『アジア革命連合』の武装集団が「ピンパイ独立!」を叫び機内を制圧。抵抗を試みた帝都大学の博士が射殺されてしまう。
彼が命をかけて守ろうとしたカバンの中には流れ弾に当たって木っ端微塵となったアンプルが入っていた。アンプルのラベルには『ガバラウィルス』の文字が!
そのころ機内の貨物室に潜入していたフランスの怪盗『ムニエル&フランベ』は大日本博物館で展示される予定のアメリカ『マーべリック財団』が保有するダイヤモンドコレクションを強奪すべくコンテナを物色していた。しかし彼が開けたコンテナには銀色に輝く生物が!その正体はエリア51から横田基地へ極秘輸送中だった宇宙生命体だった。
謎の殺人犯
15名のテロリスト
2名の怪盗
未知のウィルス
そして宇宙生命体
444便はパニック状態に陥った。
「宇宙生命体」の証拠隠滅を図るためジャンボ撃墜命令を下す在日米軍。
民主民政党のアメリカ外交団が乗る旅客機を守るべくF-15を出撃させる航空自衛隊。
さらに東京臨海空港では機内の危機を収束すべく警視庁極秘作戦部隊『SOT』が活動を開始。
地上では巨大組織がお互いを牽制。それぞれの思惑が交差する中、刻一刻と日本に迫る444便。
一方、機内では今回のフライトが最終試験だった新人CA『飛田千晴』元航空自衛隊アクロバットチーム『ブルーソニックス』のパイロットだった『角倉郁夫機長』
そして角倉のかつての恋人で結婚詐欺のおとり捜査のためロス市警に派遣されていた警視庁の刑事『榊鏡子』がそれぞれの前に立ちはだかる敵を迎え撃つ準備にとりかかっていた。。
【解説】
日本初の本格的航空パニック映画として制作された本作は実在する航空会社『さくら航空』が実名で登場する。
テレビ旭日の『-劇場版-交渉する女』や星映の『ラッキーフライト』など、近年、実在する航空会社が映画制作に協力する例は増えてきた。しかし制作過程において架空名称への変更や物語に登場するトラブル内容のダウンサウジングといった措置がとられている。航空会社を責めるわけにはいくまい、航空会社は安全が売り物なのである。
『さくら航空』はなぜ、実名で映画制作に協力したのか?
今回『さくら航空』は新機材としてジャンボの進化型である最新鋭旅客機『ボーイング747-9』を導入した。これに伴い『さくら航空』は、あらたなプロモーション活動のコンセプトに『SAKURAインパクトプロモーション』という言葉を掲げた。端的にいうと「どんな過激な方法でも良いのでさくら航空を強烈に売り込む」ということである。
「747-9を使って何か凄いストーリーを」さくら航空広報部からの申し出に東宙は小躍りしたという。
さらに『さくら航空』はCMで起用している人気アイドルグループ『ブラックフォッグアイランド』の5名全員の出演交渉まで引き受けてくれたのだ。
東宙も負けてはいられない。物語のキーパーソンの一人である新人CA役に東宙テレビ制作部が手がけたCAドラマ『ラブアテンダント09』(コトブキテレビ)の主役『門渡サキ』をはじめとして『スチュワーデスストーリー』(TTV)の『森ちえり』、『メイアイヘルプユー』(台場TV)の『中戸彩』、『Good landing!』(TTV)の『外山理香』など「CA役経験者」の女優を一堂にキャスティング。CAドリームチームが実現した!
主演は80年代の東宙芸能の看板女優『亀田ちのり』の長女『亀田あいみ』そして70年代に活躍したアクション俳優『凄杉健次郎』の長男『凄杉恭太郎』
前述の『門渡サキ』は80年代前半のセクシーアイコン『門渡レイ』の次女と二世トリオが名を連ねる。
脇を固める俳優陣も往年のコメディアン『ファンキー上方』(副機長役)日本アクション映画界の顔『桃山豪』(民主民政党代議士)性格派俳優『大苔譲治』(管制官)『蔵原高志』(テロリストリーダー)などオールスター映画の様相である。
制作費92億円。
実機を使用した迫力の映像に最新のCG技術で再現される日米戦闘機のドッグファイト、高崎市に設営された東京臨海空港の実物大セットと見所満載である。
さて、肝心のストーリーは・・・・
どうみてもつめこみ過ぎである。
密室で起こる5つの事件。
18人の犯罪者に殺人ウィルス+宇宙生命体(!)
迎え撃つのは航空機事故で亡くなったスチュワーデスを母に持つ新人CAと過去の体験で大きなトラウマを持つ元トップガンの機長。そして機長とかつて恋愛関係にあった女刑事。
危機に立ち向う人々にも「成長の青春ドラマ」「己との戦い」「ラブストーリー」が用意されている。
更に機内では人気アイドルグループ「ブラックフォッグアイランド」が東京公演に間に合うのかというタイムサスペンスや心臓病を抱える老夫婦、民主民政党の代議士同士の微妙な駆け引きなどスポット的なストーリーが散りばめられる。
地上では在日米軍VS自衛隊VS警察の三つ巴のつばぜり合い。(その警察も着陸地点の問題から警視庁・神奈川県警・千葉県警が対立する)三者のパワーゲームをかいくぐりながら444便を安全に着陸させる為に活躍する東京コントロールの管制官は離婚問題を同時に解決しようと妻にメールを打ちながら難題に取り組む。
何が縦軸で何が横軸なのかも解らなくなる「幕の内弁当」いや「オードブル」的なストーリー展開である。
後半一時間はウィルス感染の初期症状が「風邪のような症状」という設定から主要キャストが鼻声になり台詞が聞き取りづらいというのも致命的。
もちろん拡がり過ぎたストーリーは収束不能となり案の定いくつかの物語は置き去りになってしまった。管制官の離婚問題は?ダイヤの行方は?宇宙生命体はどうなった?
ラスト、突如現れた中国海軍の空母に着艦したジャンボから救出される人々に向かって新人CAが涙交じりの笑顔で言う台詞。
この台詞が映画の感想の全てを表している。
「お忘れ物はございませんか?」